条件付き確率・ベイズの定理

条件付き確率

ある確率空間を考える.全事象\(U\)に対して,ある事象\(A\)が起こる数学的な確率測度\(P(A)\)は次のように定義される.

\begin{equation} P(A) = \frac{n(A)}{n(U)} \end{equation}

ここで,\(n\)は事象の“場合の数”を返す関数であるとする.


「◯◯が起こる確率はxx\(\%\)」という言われ方が多いが,上の確率の定義に立ち返ると,\(n(A)\)の部分しか言葉として明示していないことに注意しなければならない.結局は場合の数がベースになっているのであるから,場合の数に立ち返って考えると良い.

また,確率の定義から確率の表し方の違いも見える.例えば「コインを投げて表が出る確率は\(50\%\)」とあるが,これは場合の数によれば\(\frac{1}{2}\)であるし,\(50\%\)や\(5\)割という言い方も,確率測度\(P(U)=1\)をそれぞれ\(100\)倍や\(10\)倍に再調整したものであり本質的には一緒である.

これに対して,“条件付き確率”を考える.これは言葉で説明すると「ある事象\(A\)が起こったという条件の下で,事象\(B\)が起こる確率」を指す.数式では,\begin{equation}P(B\mid A)\end{equation}で表される.

同様に,「事象\(B\)が起こったという条件の下で,事象\(A\)が起こる確率」を\begin{equation}P(A\mid B)\end{equation}と表す.

これら条件付き確率を,上の確率の定義に沿って具体的に式に落とし込むと次のようになる.


条件付き確率(conditional probability)

「ある事象\(A\)(or \(B\))が起こったという条件の下で,事象\(B\)(or \(A\))が起こる確率」を条件付き確率と言う.

これを求めるためには\(n(A)\)および\(n(A \cap B)\)を求める必要がある.それぞれの意味は以下の通りである.

  • \(n(A) \Rightarrow\) 「事象\(A\)が起こる」場合の数
  • \(n(A\cap B) \Rightarrow\) 「事象\(A\)と事象\(B\)がどちらも起こる」場合の数

「ある事象\(A\)が起こったという条件の下で,事象\(B\)が起こる確率」は,言い換えれば,「事象\(A\)を全事象とみなし,その中で事象\((A\cap B)\)が起こった確率」となる. したがって,式としては以下のように表される.

\begin{align} P(B\mid A) = \frac{n(A\cap B)}{n(A)} = \frac{n(A\cap B)}{1}\cdot \frac{1}{n(A)} &= \frac{n(A\cap B)}{n(U)}\frac{n(U)}{n(A)}\\[1ex] &=\frac{P(A\cap B)}{P(A)} \tag{1}\end{align}
同様の方法で, \begin{equation} P(A\mid B) = \frac{P(A \cap B)}{P(B)} \tag{2} \end{equation} と求められる.

\(n(A\cap B)\)の部分を\(n(B)\)としてはいけない.なぜなら,例えば式\((1)\)で考えたとき,\(n(B)\)自身は「事象\(A\)が起こった下で」という条件を満たさなければいけないからである.\(n(B)\)では事象\(A\)が起こっていない状況も含んでしまっているので適切ではない.

図1:条件付き確率をベン図で表した.分数を表しているため横線を引いている.

ベイズの定理

ベイズの定理は条件付き確率の式\((1)\)・\((2)\)を用いて整理することで簡単に導出できる.ポイントはどちらの式にもある\(P(A\cap B)\)である.整理すると以下の式に帰着する.

\begin{align}&\frac{P(B\mid A)}{P(A\mid B)} = \frac{P(B)}{P(A)}\\[1ex] &\Rightarrow P(B\mid A) = \frac{P(B)P(A \mid B)}{P(A)}\tag{3}\end{align}

この式がベイズの定理と呼ばれる式である.

次の節では演習問題を載せているが,実際はこの定理をベースに計算を進めていく.

演習問題


問題1

赤球2個と白球2個の入った袋\(X\)と,赤球1個と白球3個の入った袋\(Y\)がある.

まず,\(X\) と \(Y\)の中から一袋をランダムで選んだ後,そこから1つの球を取り出す思考を行った結果,その球は赤球だった.

このとき,選択した袋が\(X\)であった確率を求めよ.

解答

以下のように事象\(A\)と事象\(B\)を考え,それぞれの確率を与える.

  • 事象\(A\):選んだ袋が\(X\)だった
    \(\Rightarrow \quad\dfrac{1}{2}\)
  • 事象\(\bar{A}\):選んだ袋が\(Y\)だった
    \(\Rightarrow \quad\dfrac{1}{2}\)
  • 事象\(B\):選んだ球が赤色だった
    \(\Rightarrow\)(選んだ袋が\(X\)だった\(\cap\) 選んだ球が赤色だった) \(+\) (選んだ袋が\(Y\)だった\(\cap \)選んだ球が赤色だった)\(=\dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{1}{2} + \dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{1}{4}=\dfrac{3}{8}\)
  • 事象\(\bar{B}\):選んだ球が白色だった
    \(\Rightarrow\)(選んだ袋が\(X\)だった\(\cap\) 選んだ球が白色だった) \(+\) (選んだ袋が\(Y\)だった\(\cap \)選んだ球が白色だった)\(=\dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{1}{2} + \dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{3}{4}=\dfrac{5}{8}\)

    • このとき,求める確率は,

      \begin{equation} P(A\mid B) = \frac{P(A\cap B)}{P(B)} = \frac{P(A) P(B\mid A)}{P(A\cap B) + P(\bar{A}\cap B)} = \dfrac{(1/4)}{(3/8)} = \dfrac{2}{3} \end{equation}
      となる.


      問題2

      問題1において,赤球1個と白球4個の入った袋\(Z\)を加えたとき,答えの確率はどうなるか?

      変わらず袋の選出はランダムとする.

      解答

      事象関係とその確率は次のように整理する.

      • 事象\(A_i\colon\)選んだ袋が\(i\)だった.(※\(i\)には\(X,Y,Z\)が入る.)
      • 事象\(B\):選んだ球が赤色だった
        \(\Rightarrow\)(選んだ袋が\(X\)だった\(\cap\) 選んだ球が赤色だった) \(+\) (選んだ袋が\(Y\)だった\(\cap \)選んだ球が赤色だった)\(+\) (選んだ袋が\(Z\)だった\(\cap \)選んだ球が赤色だった)\(=\dfrac{1}{3}\cdot\dfrac{2}{4} + \dfrac{1}{3}\cdot\dfrac{1}{4} + \dfrac{1}{3}\cdot\dfrac{1}{5}=\dfrac{19}{60}\)
      • 事象\(\bar{B}\):選んだ球が白色だった
        \(\Rightarrow\)(選んだ袋が\(X\)だった\(\cap\) 選んだ球が白色だった) \(+\) (選んだ袋が\(Y\)だった\(\cap \)選んだ球が白色だった)\(+\) (選んだ袋が\(Z\)だった\(\cap \)選んだ球が白色だった)\(=\dfrac{1}{3}\cdot\dfrac{2}{4} + \dfrac{1}{3}\cdot\dfrac{3}{4} + \dfrac{1}{3}\cdot\dfrac{4}{5}=\dfrac{41}{60}\)

      このとき,求める確率は,

      \begin{align} P(A_X\mid B) = \dfrac{P(A_X\cap B)}{P(B)} = \dfrac{P(A_X)P(B\mid A_X)}{P(A_X\cap B) + P(A_Y\cap B) + P(A_Z\cap B)} = \dfrac{(2/12)}{(19/60)} = \dfrac{10}{19} \end{align}
      となる.

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